自由と安心を両立するケアマンションで、介護の選択肢を広げる。おおぞらケア北林大輝氏の挑戦

2026.08.14

経営者プロフィール

北林 大輝氏/株式会社おおぞら 代表取締役。リクルートでの営業経験を経て介護業界へ。A-Styleで約8年間経験を積み、YouTubeやラジオ番組などの活動にも関わる。2021年に個人会社を設立し、2024年に現在の介護事業へ本格移行。大阪市旭区を中心に、ケアマンション型の住まいと訪問介護・居宅介護を組み合わせた事業を展開している。

大阪市旭区を中心に、訪問介護・居宅介護事業を展開する株式会社おおぞら。同社は、一般的な住宅型有料老人ホームとは異なる「ケアマンション」という形で、利用者の自由な暮らしと必要な介護を両立する住まいづくりに取り組んでいる。

〜株式会社おおぞら 代表取締役 北林大輝氏〜

大阪市旭区を中心に、訪問介護・居宅介護事業を展開する株式会社おおぞら。同社は、一般的な住宅型有料老人ホームとは異なる「ケアマンション」という形で、利用者の自由な暮らしと必要な介護を両立する住まいづくりに取り組んでいる。

ワンルームマンションを活用し、外出、喫煙、飲酒といった本人らしい生活の選択をできる限り尊重する。管理された施設ではなく、「本来の家」に近い環境をつくること。それが、同社が大切にしている支援のあり方だ。

代表を務める北林大輝氏は、リクルートでの営業経験、介護業界での修行、経営難にあった訪問介護会社の再建を経て、現在の事業拡大に取り組んでいる。5年後には有料老人ホーム10棟・300床を目指す一方で、成長の中心に置くのは、利用者のQOLと、現場で働く人のチャレンジだ。

今回は北林氏に、ケアマンションという事業モデルに込めた想い、利用者の生活に向き合う支援哲学、組織づくり、そして今後の展望についてうかがった。

「施設」ではなく、自由に暮らせる家に近い場所をつくる

ーーまず、現在の事業内容について教えてください。

北林大輝:

大阪の旭区を中心に、訪問介護の事業を展開しています。特徴的なのは、一般的な住宅型有料老人ホームを新築でつくるのではなく、ワンルームマンションを借り上げて「ケアマンション」という形で運営していることです。

現在は旭区周辺のマンションを中心に4棟、他区に1棟の計5拠点を運営しています。通常の施設と比べて初期投資を抑えられる一方で、利用者さんにとっては、より自由度の高い生活を続けられる点が強みです。

ーーケアマンションという形に、どのようなニーズを感じていますか。

北林大輝:

主な対象として見ているのは、団塊の世代の男性です。特に、これまで自分の生活スタイルを大切にしてきた方ほど、管理的な施設のルールに窮屈さを感じることがあります。

たとえば、外に出たい、タバコを吸いたい、お酒を飲みたい。そうした希望をすべて一律に制限するのではなく、できる限り本人の生活に近い形で支えたいと考えています。ご家族が介護で困っている状況に対して、安心できる見守りと、本人の自由を両立する選択肢を提供したいんです。

ーー支援で大切にしている考え方は何ですか。

北林大輝:

ADLよりもQOLを大切にしています。もちろん、日常生活動作を維持することは大事です。ただ、それだけを目的にすると、その人が何のために生きているのか、何を楽しみにしているのかが置き去りになってしまうことがあります。

認知症があっても、本人が外に出たいなら、その気持ちをどう支えるかを考える。タバコやお酒も、単純に禁止するのではなく、その人にとっての意味を考える。利用者さんの「わがまま」を、できる限り尊重できる場所でありたいと思っています。

リクルートでの営業経験から、介護業界での挑戦へ

ーー介護業界に関わるようになった経緯を教えてください。

北林大輝:

もともとはリクルートで営業をしていました。起業したいという気持ちは当時からあり、常に上を目指したいという感覚がありました。その後、介護業界でコンサルティングに関わる中で、安定した収益をつくるストック型の事業として、介護施設の可能性を感じるようになりました。

ただ、いきなり大きな施設を建てるのはリスクが大きい。そこで、マンションを活用し、5部屋と従業員2名からスモールスタートする形を選びました。

ーー小規模から始めることに、どのような意味がありましたか。

北林大輝:

利用者さんや従業員の人生を預かる以上、事業は続けなければいけません。何者でもない状態で大きく始めるよりも、まずは小さく始めて、実績を積み上げることが大事だと思いました。

信頼は一気には生まれません。目の前の利用者さんに向き合い、従業員と一緒に現場をつくり、少しずつ周囲から認めてもらう。その積み重ねが、永続する組織につながると考えています。

ーーこれまでの経験で、現在の経営に生きていることはありますか。

北林大輝:

25歳のときに自転車で日本一周をした経験があります。何をするか、どう見せるかによって、周囲の反応は変わる。そのときに、行動し続けることや、公言することの大切さを学びました。

また、A-Styleで約8年間修行し、YouTubeやラジオ番組など、さまざまな活動にも関わりました。介護業界の中で発信し、つながりをつくり、ノウハウを吸収できたことは、今の事業にも大きく影響しています。

最後まで自分らしく過ごせる支援を届けたい

ーーこれまでの支援で、特に印象に残っている出来事はありますか。

北林大輝:

末期の利用者さんに対して、最後まで自分らしく過ごせる支援ができたことは強く印象に残っています。医療的な正解だけを見れば、制限したほうがよいこともあります。でも、本人が何を望んでいるのか、その人にとって何が幸せなのかを考えると、答えは一つではありません。

その方から感謝の言葉をいただいたとき、QOLを大切にする支援の意味を改めて感じました。生活の質を守ることは、単なるサービスではなく、その人の人生に向き合うことだと思っています。

ーー従業員にとってのやりがいは、どこにあると思いますか。

北林大輝:

介護は大変な仕事ですが、利用者さんの希望に向き合える現場には楽しさがあります。未経験の方でも、介護の面白さを感じられる環境をつくりたいです。

私たちは「心踊る一歩で未来を変える」という考え方を大切にしています。従業員にも、ただ決められたことをこなすのではなく、自分で考え、チャレンジしてほしい。利用者さんのために何ができるかを考えることが、仕事のやりがいにつながると思います。

ーー組織づくりで意識していることを教えてください。

北林大輝:

すべてを自分が抱え込むのではなく、任せられることは積極的に任せています。特に、チームの中には対人関係づくりが得意で、積極的に仕事を取りに行ける右腕のような存在がいます。そうしたメンバーがいることは、事業を広げていくうえで大きな力です。

一方で、コミュニケーションが重要な場面や、外部との関係づくりは、まだ自分が担う部分も多いです。今後は、自分でなくても進む仕組みをつくりながら、組織として成長していきたいと考えています。

300床を公言し続けることで、夢を現実に近づける

ーー今後の成長目標について教えてください。

北林大輝:

5年後に、有料老人ホーム10棟・300床まで拡大することを目指しています。この規模は、従業員のキャリアアップをつくるうえでも、自分が意思決定を速く行える範囲としてもちょうどよいと考えています。

数年前から「300床」と言い続けています。最初は夢物語のように受け取られることもありましたが、言い続けることで、周囲の見方が少しずつ変わってきました。公言することで、自分自身も逃げられなくなるし、応援してくれる人も増えていくと感じています。

ーー直近で取り組みたいことは何ですか。

北林大輝:

まずは、11月に訪問看護事業を始める予定です。あわせて、引っ越しや家財処分のサービスも拡充していきたいと考えています。介護が必要になると、住まいの移動や生活環境の整理も大きな課題になります。そこまで含めて支えられる体制をつくりたいです。

また、M&Aや新築施設も含めて、来年中に3棟を追加することを目指しています。スピード感を持って動きながらも、無理に広げるのではなく、必要とされる地域・対象者に絞って展開していきます。

ーー事業成長のうえで、大切にしている戦略はありますか。

北林大輝:

大手企業のように全国へ広く浅く展開するのではなく、地域や対象者を絞ることが大切だと思っています。いわゆるランチェスター戦略です。特定のエリアや世代に特化することで、競合を減らし、その分野で一番頼られる存在を目指す。

ニッチに見える領域でも、そこに本当に困っている人がいるなら、専門性を磨く価値があります。介護施設や病院のネットワーク、運営状況など、特定分野で圧倒的な知見を持つことが、信頼につながると思っています。

応援される経営者であることが、事業を前に進める

ーー採用や認知拡大の状況はいかがですか。

北林大輝:

採用は紹介を中心に、現時点では順調です。SNSでの認知拡大も進んでいます。ありがたいことに、事業や考え方を知ってくださる方が増えてきました。

一方で、課題は自分自身の時間と体力です。対外的な窓口を自分が担っている部分が大きいので、今後は業務管理や委任の仕組みづくりが重要になります。

ーー若い経営者や、これから福祉・介護領域で挑戦する人へ伝えたいことはありますか。

北林大輝:

まずは、自分が何をやりたいのかを周囲に伝えることだと思います。資金がなくても、人との出会いを通じて熱意を伝えることで、応援してくれる人は増えていきます。

成功している経営者ほど、受けた恩を返そうとする方が多いと感じています。だからこそ、自分の目標ややりたいことを口に出し、応援される状態をつくることが大切です。事業は一人では進みません。愛され、応援されるコミュニケーション力も、経営に必要な力だと思います。

ーー最後に、利用者さん・ご家族・求職者・同業の方へメッセージをお願いします。

北林大輝:

利用者さんやご家族には、自由と安心を両立できる選択肢があることを知ってほしいです。施設のルールに合わせるだけではなく、その人らしい暮らしをどう支えるかを一緒に考えたいと思っています。

求職者の方には、介護の仕事を、ただ大変な仕事としてではなく、人の生活を豊かにする面白い仕事として見てほしいです。自分で考え、チャレンジしたい方には、きっとやりがいのある環境だと思います。

同業の方とは、競争だけではなく、互いに学び合い、必要な人に必要な支援を届ける関係をつくっていきたいです。地域に根ざしながら、介護の選択肢を一つずつ広げていきたいですね。

編集後記

北林氏の話から一貫して伝わってくるのは、「介護を受ける人を、管理される存在として見ない」という姿勢だ。外出したい、タバコを吸いたい、お酒を飲みたい。そうした希望は、介護の現場ではリスクとして扱われることもある。しかし、おおぞらケアが向き合っているのは、リスクを避けることだけではなく、その人が最後まで自分らしく生きるために何が必要かという問いだ。

ケアマンションというモデルは、初期投資を抑えた事業戦略であると同時に、利用者にとっては生活の自由度を残す選択肢でもある。ワンルームマンションという日常に近い空間で、必要な介護を受けながら暮らす。その形には、ADLよりもQOLを大切にする北林氏の支援観が表れている。

また、5年後300床という目標を公言し続ける姿勢にも、同氏らしさがある。夢を語るだけではなく、小さく始め、実績を積み、応援される関係をつくりながら前に進む。株式会社おおぞらの挑戦は、自由と安心を両立する介護の新しい選択肢として、今後さらに広がっていくだろう。

会社概要

大阪市旭区を中心に、ワンルームマンションを活用したケアマンション型の住まいと訪問介護・居宅介護を展開。ADLよりQOLを重視し、自由と安心を両立する支援を大切にしている。

公式サイトはこちら

※外部サイトへ移行します

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